脱毛サロンやエステが倒産して返金を求める場合、現金一括払いのケースでは返金が難しい傾向にあるものの、クレジットカードや信販ローンの分割払いであれば割賦販売法にもとづく「支払停止の抗弁」によってカード会社への未払い分の請求を止められる可能性があります。
帝国データバンクの調査では、直近2年間で延べ150万人が倒産被害を受けたと推計されており、脱毛サロンの倒産トラブルはもはや一部の人だけの問題ではありません。また、倒産したサロン以外に契約中のエステがあれば、中途解約によって未消化分の返金を受けられるケースもあります。
本記事では、脱毛サロン・美容クリニックの倒産時に取るべき具体的な対処法と、弁護士への相談で被害を最小限に抑えるための方法を法的根拠とともに解説します。支払い方法別の対応や今すぐやるべき手続きを整理していますので、ご自身の状況に照らしながらお読みください。
【この記事のポイント】
- 脱毛サロン・美容クリニックの倒産件数は過去最多を更新し、直近2年間で延べ150万人が被害を受けたと推計されている
- 倒産したサロンからの返金は、支払い方法を問わず極めて難しいのが現実。ただし、倒産によって契約は当然に終了するので、未消化部分の支払い義務は当然になくなる
- クレジットカードや信販ローンの分割払いであれば、割賦販売法に基づく「支払停止の抗弁」で今後の未払い分の請求を止められる可能性がある。既払い分についても、信販会社に対する請求で未消化部分の対価に相当する額の返金が認められる可能性がある
- 倒産していない別のサロンと契約中であれば、特定商取引法に基づく中途解約をすれば、別のサロンからは未消化分の返金を受けられるケースがある
- サロン側が解約に応じない場合や高額な違約金を請求された場合は、弁護士への相談で交渉代行が可能
脱毛サロン・クリニックが倒産したら返金はどうなる?

脱毛サロンやエステ、美容クリニックが倒産した場合、前払いした施術料金の返金は支払い方法を問わず極めて難しいのが現実です。まずは倒産被害の規模と、破産手続きにおける返金の仕組みを整理します。
倒産件数は過去最多。被害規模と返金の現実
帝国データバンクによると、脱毛サロン・美容クリニックの倒産件数は過去最多を更新し続けています。
| 調査期間 | 倒産件数 | 備考 |
|---|---|---|
| 2023年(通年) | 11件 | 過去最多 |
| 2024年(通年) | 14件 | 過去最多を更新 |
| 2025年(1〜7月) | 12件 | 前年同期比3倍 |
2025年8月には業界最大手「ミュゼプラチナム」が負債約260億円・債権者約123万人で破産しており、大手でも倒産は避けられない状況です。
主な倒産事例は以下のとおりです。
| 名称 | 形態 | 破産時期 | 負債総額 | 影響人数 |
|---|---|---|---|---|
| 脱毛ラボ | 脱毛サロン | 2022年8月 | 約60億円 | 約3万人 |
| シースリー | 脱毛サロン | 2023年9月 | 約80億円 | 約4.6万人 |
| 銀座カラー | 脱毛サロン | 2023年12月 | 約58億円 | 約10万人 |
| アリシアクリニック | 医療脱毛 | 2024年12月 | 約124.7億円 | 約9.2万人 |
| トイトイトイクリニック | 医療脱毛 | 2025年2月 | 約4.9億円 | 約1.9万人 |
| ミュゼプラチナム | 脱毛サロン | 2025年8月 | 約260億円 | 約123.2万人 |
破産手続きで消費者に返金される可能性は極めて低い
脱毛サロン・美容クリニックが破産する場合、負債が資産を上回る「債務超過」の状態であるケースがほとんどです。わずかに残った資産も従業員の給料など優先度の高い債権に充てられてしまうため、消費者に返金されるケースはほぼありません。
破産法では、破産した会社に残された資産をどの債権の弁済に充てるのかという優先順位が以下のとおり定められています(第148条、第98条、第99条等)。
| 優先順位 | 種類 | 例 |
|---|---|---|
| 1 | 財団債権 | 破産手続申立ての費用・従業員の給料 |
| 2 | 優先的破産債権 | 財団債権に該当しない従業員の給料・租税公課 |
| 3 | 一般破産債権 | 金融機関の借入金・前払金(の返還請求権) |
| 4 | 劣後的破産債権 | 破産手続開始決定後の利息・遅延損害金 |
| 5 | 約定劣後破産債権 | 劣後特約付きの社債・劣後ローン |
消費者の「未消化分の返金請求」は3番目の一般破産債権にあたり、優先的に支払われる財団債権や優先的破産債権より後回しにされる位置づけのため、返金されるケースは稀になってしまいます。
ただし、一部でも返金がなされる可能性があるため、破産管財人や裁判所から連絡が来た場合には、案内に従って、債権届出を行いましょう。届出をしなければ配当を受ける権利自体を失ってしまいます。
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支払い方法別の対応と返金の可能性

倒産したサロンからの返金の実現可能性は低いですが、未消化部分については支払う必要はありません。支払停止の抗弁の手続きを行うことで、カード会社など倒産会社以外からの請求を止め、被害の拡大を防ぐ手段が残されています。また、倒産していない別のサロンと契約中であれば、中途解約による返金の可能性もあります。
クレジットカード・信販ローンの場合(支払停止の抗弁)
支払停止の抗弁とは、脱毛サロンが役務を提供してくれない場合に、クレジット会社からの代金の請求に対して、支払を停止するというものです。脱毛サロンの「クレジット払い」には複数の種類があり、支払停止の抗弁が使えるか否かは契約形態で異なります。
| 支払い方法 | 具体例 | 支払停止の抗弁 |
|---|---|---|
| 包括信用購入あっせん | クレジットカードの分割払い・リボ払い | 行使できる可能性あり |
| 個別信用購入あっせん | サロン店頭で組む信販ローン(オリコ・ジャックス等) | 行使できる可能性あり |
| クレジットカード一括払い・2回払い | マンスリークリア等 | 対象外 |
割賦販売法第30条の4に基づく支払停止の抗弁が行使できるのは、クレジットカードの分割払い・リボ払いと信販会社を通じたローンに限られます。
また、抗弁が認められても止められるのは今後の未払い分です。支払い済みの金額が当然に返金されるわけではありませんが、未消化部分の対価についてはカード会社への請求で返金が認められる可能性もあるため、詳しくは弁護士にご相談ください。
国民生活センターも「既支払金の返還を主張できるものではない」と説明しています。
自社ローン・現金・銀行振込の場合
自社ローンや現金・銀行振込で一括払いをしていた場合、返金を受けられる可能性は極めて低いのが現実です。自社ローンは割賦販売法の適用対象外のため支払停止の抗弁が使えず、現金・振込の場合は破産手続きの配当に頼るほかありません。
前述のとおり、破産配当で一般消費者に回る金額はごくわずかか、ゼロになるケースがほとんどです。
なお、自社ローンの場合は倒産したサロンとの直接契約であり、倒産によって未消化分の支払い義務はなくなります。破産手続き開始決定後はサロン側の債権行使が法律上制限され(破産法第100条1項)、請求が停止されるのが通常です。
債権譲渡がなされている場合は対応が異なる可能性があるため、請求書が届いた場合は差出人を確認のうえ弁護士にご相談ください。
「現金払いだから諦めるしかない」と感じるかもしれませんが、倒産していない別のサロンと契約中であれば、中途解約によって今後の出費を抑えられる場合があります。
他サロンの契約が残っていれば返金の可能性あり
倒産したサロンからの返金が難しい一方で、まだ営業している別の脱毛サロンやエステとの契約が残っている場合は、中途解約やクーリングオフによって未消化分の返金を受けられる可能性があります。
脱毛やエステの契約は、総額5万円(税込)を超えるのであれば特定商取引法上の「特定継続的役務提供」に該当し、第49条により契約期間内であれば理由を問わず中途解約が可能です。
中途解約時にサロン側が請求できる費用にも上限が定められています。返金額は、支払い済み金額からこれらの費用を差し引いた金額です。
- 施術開始前:2万円
- 施術開始後:提供された役務の対価相当額+2万円または残額の10%のいずれか低い方
上限を超える違約金を請求された場合、その超過分は無効です。倒産をきっかけに他の契約を見直し、不要な契約を中途解約することで、これ以上の出費を防げるでしょう。
また、特定商取引法第42条で定められた法定記載事項を一つでも欠いた法定書面しか交付されていない場合は、契約から8日間を経過していてもクーリングオフが可能であり、契約を解除し支払った金額全額の返金を請求できます。
ただし、サロン側が解約に応じないケースも実務上は少なくありません。そのような場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
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倒産を知ったら今すぐやるべき手続き

対応が遅れるほど取れる手段が限られるため、倒産を知った時点ですぐに動くことが重要です。支払い方法に応じた手続きと、すべての人に共通する書類の保全を解説します。
クレジットカード会社への支払停止の抗弁手続き
脱毛サロンの料金をクレジット分割払いなどで支払っている場合は、クレジットカード会社へ連絡して「支払停止の抗弁」の手続きをしましょう。手続きをしないと引き落としが続いて、損失が拡大してしまいます。
一般的な手続きの流れは、以下のとおりです。
- クレジットカード会社に電話で連絡し、「支払停止の抗弁を申し出たい」と伝える(電話での受付けを行っていないケースもある)
- クレジットカード会社のホームページから支払停止の抗弁に関する申出書をダウンロード・記入する
- 必要書類(契約書のコピー・施術回数が確認できる資料・倒産を知った日が分かる資料)を用意する
- 申出書と必要書類をクレジットカード会社に送付する
手続きの流れや必要書類はクレジットカード会社によって異なるので、ホームページなどから確認しましょう。カード会社が抗弁を認めない場合や迅速に手続きしたい場合は、弁護士への依頼を検討してください。
破産管財人への債権届出の方法
支払い方法に関係なく対応すべきなのが、破産管財人への債権届出です。「債権届出」とは、破産管財人に対して自己の債権の内容を正式に届け出る手続きで、配当を受けるには届出が必須となります。
債権届出書は、破産手続きが開始されると破産管財人から債権者に対して送付されるケースがあります。案内が届いた場合は、届出期間内に必ず提出してください。届出書には主に以下の内容を記載します。
- 届出人の氏名・住所・連絡先
- 債権の金額(未消化の施術回数×1回あたりの単価で算出)
- 債権の発生原因(サロンとの契約内容・契約日)
金額の算出に迷う場合は、契約書に記載された総額から施術済み回数分を差し引いて計算するのが基本です。
なお、自動的に届出書が届かない可能性もあることから、事業者や破産管財人のホームページ、裁判所の破産事件情報などから情報を確認しましょう。
契約書類・カード明細の保全
支払停止の抗弁にも債権届出にも、契約内容と支払い状況を証明する書類が必要です。倒産を知った時点で、以下の書類を確保しておきましょう。
- 契約書・契約概要書面の原本またはコピー
- クレジットカードの利用明細・信販ローンの契約書
- 施術回数が確認できる記録(会員アプリのスクリーンショット・診察券など)
- 倒産の事実を知った資料(破産管財人からの通知・サロンからのメール・報道記事など)
サロンの会員サイトやアプリは、倒産後にアクセスできなくなる場合があります。閲覧できるうちにスクリーンショットを取っておくことが大切です。
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弁護士に相談すべきケースとは

倒産したサロンからの返金は弁護士が介入しても回収が極めて難しい案件です。一方で、倒産していない他サロンとの契約が残っている場合は、弁護士が中途解約の交渉を代行することで返金につながる可能性があります。
中途解約の交渉を弁護士に依頼するメリット
中途解約は消費者自身でも申し出ることができますが、サロン側が素直に応じないケースも少なくありません。弁護士に依頼した場合は、以下のような対応が可能になります。
- サロンへの受任通知の発送による窓口の一本化(本人が直接やり取りする負担がなくなる)
- 特定商取引法第49条に基づく中途解約の交渉代行
- 法律上の上限を超える違約金が請求された場合の減額交渉
- 複数契約を一括で整理し、返金の可能性を検討するための方針立案
特に、サロン側が「解約はできない」「違約金として○万円かかる」などと主張してきた場合、法的根拠を示して交渉できる点が弁護士に依頼する最大のメリットです。
こんな場合は早めに相談を
以下に該当する方は、早い段階で弁護士に相談することで、取れる手段が広がる可能性があります。
- 倒産したサロン以外にも複数のサロン・エステと契約中で支払済みの金額がある
- サロンに中途解約を申し出たが、解約を拒否された・高額な違約金を請求された
- クレジットカード会社に支払停止の抗弁を申し出たが認められなかった
- 契約内容が複雑で、自分にどの手続きが使えるか判断がつかない
初動の情報整理には消費者ホットライン(188)や法テラスも有効ですが、いずれも相談・あっせん機関であり、解約交渉の代行はできません。
あおぞらみらい法律事務所では状況を確認したうえで、依頼すべきかどうかも含めてアドバイスしています。まず状況をお聞かせください。
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よくある質問(FAQ)

- Q脱毛サロンが倒産しましたが何から始めればいいですか?
- まずは契約書類とカード明細を手元に確保したうえで、支払い方法に応じた対応を進めてください。
- 分割払いの場合:カード会社・信販会社に連絡し、支払停止の抗弁を申し出る。未消化部分の支払いをしている場合は、その部分について返金請求をする
- 一括払いの場合:破産管財人からの債権届出の案内を待ち、届いたら期限内に届出を行う
あわせて、倒産したサロン以外に契約中のサロンがあれば、中途解約またはクーリングオフによる返金も検討しましょう。
- Q倒産したサロン以外にも契約があります。解約で返金してもらえますか?
- 契約期間内であれば、中途解約またはクーリングオフによって未消化分の返金を受けられる可能性があります。
脱毛やエステの契約が特定商取引法の「特定継続的役務提供」に該当すれば、理由を問わず中途解約が認められています。また、法定の要件を満たす契約書面の交付がない場合はクーリングオフが認められています。
サロン側が解約に応じない場合や高額な違約金を請求された場合は、弁護士への相談をご検討ください。
- Q倒産したサロン以外との契約が少額でも解約の相談はできますか?
- 金額の大小を問わず、相談可能です。
少額に見える契約でも、分割払いの場合は今後の引き落とし分を含めると総額が想定より大きくなるケースがあります。「このくらいの金額なら仕方ない」と判断する前に、まずはお気軽にご相談ください。
- Q他サロンとの契約を長期間放置していましたが、今からでも解約できますか?
- 契約期間内であれば、中途解約は可能です。また、法定の要件が記載された契約書面の交付がない場合はクーリングオフが可能です。
ただし、契約期間を過ぎると特定商取引法に基づく解約権を行使できなくなる可能性があります。契約書に記載された期間をご確認のうえ、早めにご相談ください。
- Q相談したら必ず依頼しなければいけませんか?
- いいえ、相談のみで終わっても問題ありません。
相談の結果、「自分で手続きできる」「費用対効果が合わない」と判断した場合は、依頼せずに終わることもできます。あおぞらみらい法律事務所では、依頼を前提としない情報提供の相談にも対応しています。



